今後の裁判日程





【平成19年4月12日(木)午後2時〜 第9回口頭弁論 証人尋問 ニコン側証人 臨床心理士】
【証人尋問】〜概要〜
  ◎主尋問 ニコン側代理人: 牛嶋勉弁護士
Q:
(乙108を見ながら、本人の略歴を確認。質問が続く)
・・・専門は性格心理学です。自殺親和性のある性格とはどのようなものですか。
証人:
日常的言葉で言えば、同じ状況の中で、自殺を考えてしまう性格のことを言います。几帳面、純粋、まじめ、融通がきかない。いい加減、無責任、ズボラなら自殺に追い込まれない。
Q:
内罰的性格とは。
証人:
反対ことばに外罰的があります。起こったことの原因は外の原因と考える。内罰的とは自分に原因があると考える人のことです。内罰的な方は自殺しやすい。危機を乗り越える能力の違い。困ったこと、苦しいことなどは、乗り越えると強くなりますが、困難について打開を思いつけない。
Q:
意見書には気分転換なども書いてありました。
証人:
気分転換の趣味や友情、ユーモア、困難な過去の経験・・など、持っていれば自殺しにくい。
Q:
上段さんについて、先ほどあげた中にありますか。
証人:
真面目、責任感あり。そう思っています。
Q:
気分転換の趣味、友情、ユーモア・・などは。
証人:
提出された書類などからは、たくさんの友人は読み取りにくい。趣味に打ち込む、気分を変えていたことも知りえない。まじめで思いつめる方。
Q:
意見書には内閉的、強迫的、非社交的、ストイズムなど書かれていますが、どのような点から判断されましたか。
証人:
内閉的、自分の中にこもる。非社交的も内閉的に関係する。
Q:
判断の資料は何ですか。
証人:
中学の担任が書いたもの。中学2〜3年に性格が変った。就職後の友人の証言(※当裁判に陳述書を書いた、ニコン社員のこと)を聞くと、彼(※勇士)が進んで話さない。聞かれれば答える程度だった、心を開く傾向がない。
Q:
20代前半の男性として、女性、同年代の友人もいなかったと指摘しています。
証人:
人は家族にもいえないプライベートは友人に語る。聞いてくれる人がいる。20代はしばしば複数あるいは1人、話すものである、自然に得ている。そういうことがなかったように思える。深い関係を作るのは不得手であった。
Q:
ここに住所録があります。親族の方々が載っている。それ以外、ネクスターの熊谷営業所だけが書かれている。交友関係はどう思いますか。
証人:
友人の住所、先輩、ない。彼自身、友人の名前がない。友だちとの交流がない。なごやかな過ごし方が少ない。
Q:
父がギャンブルで母が離婚した。しだいに内に閉じこもることが多かったのでは。内閉的傾向に関わりありますか。
証人:
最近離婚は多い。全てそうなるとは思えないが、上段さんは長い期間がある。たびたびの転校もしている。友人の付き合いもない、家に引け目があったのではないか、それが内閉的につながったと考える。
Q:
孤食ということを書かれています。
証人:
心理学では1人で食事をすることが続いている状態。反対では、家族、親しい人と楽しく食事する。友人(※自称、勇士の友人。ニコン側で陳述書を提出した人々のこと)が誘っても、自分の作った弁当を一人で食べていた。これが生活の大きな特色。
Q:
上段さんは学資をためるため進んで勤務したとなっています。資料はなんですか。
証人:
ニコンの勤務状況を参考にした。職場の同僚(※ニコン社員)の意見を参考にした。
Q:
食費を節約、外食節約、預金がたまっていたとあります。
証人:
上段さんの手帳(※出張時の勇士の覚書)を参考にしました。
Q:
7月20日から始まる週の記載です。ニコンはあらかじめ定額で配布されます。これをみると、21日夜150円、22日夜210円、23日夜105円、24日夜73円、25日夜210円、26日夜73円。昼食より少ない金額になっている。
証人:
これをみて、夕食を切り詰めていた、きわめて少額。昼は誰かと一緒だったのだろう。夜は孤食。それほど切り詰めていた、それを考えるとかわいそうに思える。
Q:
(勇士の通帳から)平11.1/18、140万残高。1/23の兄に50万貸した。2/8 に母に20万貸した。70万残高になった。
証人:
上段さんに強い挫折感が起こった。思っていたことが達成できない喪失感、取り返しがつかない。自分の手元から金額が離れた挫折感と思う。がっくりと落ち込んでしまったと思う。
Q:
ニコンの勤務による自殺と言われているが。
証人:
どのように受け止めるかです。個人差、年齢差、得るものがあるかどうか、楽しみはあるか、・・さまざま重なる。ニコンの人達から聞くと真面目に出勤し仕事をしっかりしていた。職場で倒れることもなかった。職場の中で彼の異常に気付くのは難しい。

◎ 反対尋問 原告側代理人: 川人博弁護士
Q:
(本人の経歴から質問が続いて)医学部は卒業なさっていない。
証人:
医学部の卒業ではありません。私は医者ではない。
Q:
(ご本人の著書から)“青年の心理”で、自殺者の中では精神病者の割合が10〜20%となっているが、実際は90%ではありませんか。精神病にはうつ病も入っているわけですね。
証人:
うつ病も含まれていると思う。書いた当時、1978年頃はこうだった(ご本人の著書のようだった)のではないか。
Q:
(甲178の1)ここには自殺者の90%以上が精神障害と書かれています。中でもうつ病が最多で全体の45%を占めている。平成15年に出ている。
証人:
私は医学の教育は受けていないし医師の免許もない。その本にはそう書かれているが、意見を述べることは出来ない。自殺一般について論じるのは差し控える。
Q:
いや、あなたは“青年の心理”として(この裁判に意見書を)詳細に提出しています。まったく素人なのに提出したことになりますか。自殺については素人ですか。
証人:
自殺の専門家ではありません。
Q:
(甲147)この著者は精神医学者、自殺研究の第一人者です。自殺者は約9割は何らかの精神障害にかかっていた、と言っています。上段さんがうつ病かそうでなかったか、あなたはどう判断していますか。
証人:
私は医者ではない、判断は出来ない。
Q:
うつ病者が自殺することはありますか。
証人:
あります。
Q:
あなたのさきほどからのお話ですが、上段さんがうつ病者であったとしたら、筋違いではありませんか。
証人:
質問、・・分からない。
Q:
意見書の中で、うつ病は自室で自殺するのは珍しいのに、本件では、早く自殺を知ってもらいたい、その点、アピールしていたのだと言っています。この内容は上段さんはうつ病でなかったと判断した内容ではないですか。
うつ病は自室で自殺するのはまれ、というのは調査報告書があるのですか。
証人:
報告書・・。記憶が・・。記憶にないです。うつ病はひっそりと亡くなるのに、上段さんはすぐ発見される所だった。追い詰められた結果のものだったのではないか。
Q:
(甲180)約10年間、裁判所で労働者の自殺について出された判決です。32事案の一覧表になります。一番上は「電通」の事案です。自宅で亡くなっているんですよ、御存知ですか。
証人:
「電通」・・。知りません。
Q:
「川崎製鉄」
証人:
知りません
Q:
この人も会社の屋上です。
証人:
・・・。
Q:
最近のです。小児科の医師です。自殺は病院の屋上から。
証人:
・・・。
Q:
これらの判決をみると。うつ病と認定されたのは2/3です。そのほとんどは会社、自宅で自殺している。裁判所の例からも歴然です。
証人:
私は・・。何とも言えない。
Q:
自殺について研究したことはありますか。
証人:
私の学生、近親者に聞いている。
Q:
(乙127)学生の調査とはこのことです。労働者の調査はしたことがありますか。
証人:
ございません。
Q:
うつ病かどうかの判断基準(ICD)、国際規準ですが最新はご存知ですか。
証人:
精神科医ではないので分かりません。
Q:
(判決文を示して)判決もICDを採用しています。「・・ICDの判断規準に照らせば・・」とあります。あなたはこの判決に異論があるということですか。
証人:
なんともいえません。
Q:
1999年、労働省通達はご存知ですか。
証人:
知りません。
Q:
(通達文書を読んで)ICD・・・。
証人:
知りません。
Q:
(同じく通達文書の別部分を読んで)・・。
証人:
知りません。
Q:
あなたはICDに関して判断をしていませんか。
証人:
医者ではないので立場にない。
Q:
(甲177)これは3/17の産経新聞、大学精神科医による交替勤務に関する記事です。不眠や抑うつが高くなるとあります。あなたは交代勤務の不眠や抑うつについて調べたことはありますか。
証人:
知りません。
Q:
交替勤務の労働者の研究はしてないですか。
証人:
ありません。
Q:
クリーンルームについてはいかがですか。
証人:
聞いたことはあるがイメージはありません。
Q:
クリーンルームのうつについてはいかがですか。
証人:
クリーンルームそのものを見たことがないので何とも・・。
Q:
意見書の中で書かれた上段さんについては、労働、勤務環境は調べていないのですか。
証人:
ニコンからの提出物で判断した。クリーンルームは入っていません。クリーンルームの精神疾患については分からない。
Q:
死亡1ヵ月前、15日間休みなく、長く働いたことについてはどうですか。
証人:
そのような形、2週間勤務は承知しています。連続勤務は身体的にも精神的にも個人差がある。作業内容、人間関係、いろいろある。15日間連続勤務なら私も大学で経験がある。
Q:
熊谷のクリーンルームで15日間、誰もしていなかったんですよ。どんなデータがありましたか。
証人:
いや、持っていません。
Q:
家庭よりも職場や学校のほうが精神病が発見されやすいと“青年の心理”にあるがこれはなぜですか。
証人:
わが国の場合、自分の親族に精神病を認めたがらないためにと思う。
Q:
(乙107)この中で、あなたは会社側が予見できたとはとうてい考えられないとあるが。うつ病であるとニコンは判断できないということですか。
証人:
はい、ニコンはうつ病と判断できないと思います。
Q:
うつ病についてはコメントできないと言っているあなたが、なぜ、あなた自身がうつ病を論議できるのですか。
証人:
学生時代にも扱って・・。
Q:
(乙207を読み上げて)・・自殺未遂者の・・。あなたが自殺しやすいと言ったものはそこにかいてあることが根拠ですか。
証人:
未遂に終わった人について引用したものです。
Q:
あなたにはひとつとして具体的な、統計的、疫学的な資料がない。
証人:
私は科学的資料は見たことがない。
Q:
孤食も自殺しやすいといってますが。
証人:
孤食、自殺に関連がある。
Q:
どのような資料に基づいていますか。あなた個人の考えですか。
証人:
調査結果、接したことはありません。
Q:
具体的な資料はないのですか。
証人:
自殺した人には調査できない。
Q:
あなたが参考文献とした稲村氏も、未遂者と既遂者とは違うと言っていますよ。
証人:
さまざま入っているので難しい。
Q:
あなたは上段さんの精神疾患について、意見は述べられないということでいいですか
証人:
はい。

◎ 再主尋問: ニコン代理人からは、「とくにありません」ということでした。

◎ 補充尋問: 裁判長
Q:
(乙107)平成17年6/30の意見書ですが、作成にあたっての参考資料はなんですか。裁判記録、証拠を読んだ上での記録ですか。
証人:
今から2年前なので。何を参考か覚えていません。関係者から聞いたこと、私の知っている心理学で書いたものです。個人のおいたちの記録からイメージが浮かびました。追い込まれていったと思えました。これから死ぬことを家族に言うこともできない。・・何を思っていたのか、哀悼の気持ちを持っています。
Q:
いろいろ見て書かれたようですが、退職の申し出では証拠にあらわれているとあります。どのような証拠ですか。
証人:
本件の場合、・・(本文を読みながら)一審での陳述書、会社の上司、同僚のものなどです。
Q:
予見可能性に関する意見と退職の申し出のところと、一見矛盾しているように思えますが。
証人:
実のところよく分かりません。本来の希望・・、辞める、それだけ大変なこと、お金も入らないようになる、家もなくなる・・。2/28以来、母も知らない・・。親にも言わない、言えない・・。私もよく分かりません。亡くなる前に5万円おろしているが、どこにもない、なぜか・・。よく分かりません。・・気の毒でなりません。
Q:
大変ごくろうさまでございました。